りっちゃん、いまはどこへ向かっているの?」

「デルタが行くと行った場所」

少女は細い指をすいっと指を動かして示す。示した先に立体宇宙地図が浮かび上がる。

「赤」

青味がかった立体図の中に薄ぼんやりと赤い光の点が見えた。

「珍しいね。唯の艦でも惑星でもなくて人工惑星……?」

「そうね」

「おお! 俺初めてかも。なかなか規模大きそうだね」

「地球の約0.83倍」

「もはやその表現ってよくわからないよね。皆が皆地球を見たことがあるわけじゃないのに」

人工惑星とは巨大な宇宙艦の俗称で、その用途はも単なる宇宙艦としての役割を超えている。純粋な宇宙探索機としての機体もある中、大規模な実験施設や、犯罪者の収容施設が興りとして発展した場合もある。

一定の場所に留まり続ける艦や、自由に移動を続ける艦など様々だが、閉鎖的な艦が多いため内部の文化が特殊に発達しやすく、どの惑星も入艦することすら難しい。艦によっては自分の住んでいる場所が人工惑星ということすら知らずに民が住んでる惑星もある。

「俺、行ってみたかったんだよね、人工惑星。でも、あれ?俺ここに行こうなんて言ったっけ?」

「人工知能についての研究開発についてアドバイスが欲しいと依頼がきた。デルタが『受けてもいいんじゃない?暇だし』といった」

「……そうだっけ?」

「そんなに曖昧なら会話ログを引き出してきてもいいのよ」

「いや……」

「ここ数日の履歴くらい欠けなく残ってる」

「あ、はは、そうだろうね」

「人の記憶なんて曖昧なものとは違う。ーーここにいるのはアンドロイドなんだから」