青き政変王――アルス・オブ・リンデル。
少年期までの動向が謎に包まれ、王太子として擁立されないまま突如として歴史の表舞台に現れた。
彼の名は、二度の内乱と第三次リンデル・ギニファ戦争に関連して語られる。
しかし、政変の立役者と言われるマシュー・レイヴィーや、オーランディアの海戦において壮絶な戦いを制したウィリアム・デスパードと比べると影が薄いだろう。
ましてやその後の長き平和を築き上げ、古代魔法文明の残り香で燻っていたリンデルを再び繁栄へと導いた娘のグロリアーナ女王の存在を考えると、その知名度は圧倒的に低い。
ならば、彼の功績とは一体何だったのか。
これは、歴史の奥底に沈む、彼が大陸の記憶に抗った戦いの記録である。
断言しよう。
彼がいなければ、この国はもうなかったのだと。
東国アーナヴァルタにて科学という技術革新が興り、かつて世界を支配していた魔法技術が衰退を始めた時代。
魔法中心の社会から変革を余儀なくされ、時代が動きつつあるリンデル王国のお話。
リンデル王国王子、アルスは王との折り合いが悪く、表舞台から遠い場所で過ごしていた。
寄宿学校から王宮へと戻ってきたアルスは、様々な理由から問題のある兵の集まりである第六近衛兵団の管理者として日々を過ごしていた。
ある日、とあるきっかけから城を抜け出すようになる。
そこで、クロードたち赤の守護者(レッドガーディアンズ)と出会い、王子という正体を隠したまま打ち解けていく。
彼らとの出会い、南部からおこる反乱の兆し。