警備兵としての職務に就いてから二年。
アンドリュー・パブロはあと四日で二十三歳の誕生日を迎えようとしていた。
一部の例外を除き、法の元、ほとんどの職ではロボット四台につき一人の割合で人間が働かなければなければならないが、人間でなくてはならない仕事が少なくなった分、夜勤もある肉体労働はとりわけ職業人気が下のほうだった。
せめて貢献度でも見えればやりがいもあろうというものだが、高度なセンサーを備えたロボットにそうそう勝てるものはおらず、指示系統すら危険予兆の解析を考えると、ロボット配下に人間を置く構成のほうが多い。
ロボットは部下の適性をチェックして、必要な指示と対応をするが、上司ロボットは人間の感情のブレをリスクとしてマイナスに計算する傾向が強い。人間は、他の同僚ロボットには共有される任務内容を秘匿されやすく、それもアンドリューにとって不満だった。
ただしこれには抜け道もあった。
警備の仕事が人間にとって比較的単純な内容であるということはロボットとしても同様である。
全て一から人工的に作り上げられたこの星は、資源が限られている。
AIの特殊ハードウェアとロボット筐体の資産再利用のため、重要な指示判断部として利用されるロボット以外は、すでに需要のない型落ち品や、要求を満たせず非採用品となった試作ロボットなどが利用されがちだ。そして、それらはリサイクルのエネルギーすら渋られ、基盤OSに新たな共通ソフトウェアがインストールされるのみで再出荷となる。
元が家事代行ロボットであれば休憩室での給湯室を支配していたり(完璧な温度と風味のお茶を出してくれる)、アンドリューが親しくしているロボットは人に近づけようと感情を乗せたロボットとして研究開発された試作物であったため、人に対して友好的で、アンドリューに対してとても懐いてしまった。
警備員としての動きを担うソフトウェアが本来は優位で働くはずだが、全てのロボットに共通使用させているソフトウェアということもあり、全てに対応しきれず特殊ロボットの本能とも言える行動の権限が最も強く働くバグが残っていた。
アンドリューと親しくしている彼はアンドリューの質問に対して「聞き方次第で」答えてくれる。
だから、アンドリューは今回の仕事の目的も意図も知ってしまった。